背中を撫でる指先【TABOO】
後ろから人が押し寄せて、間もなく身動きの取れない状況になる。
「香緒里、大丈夫か?」
「うん。拓郎も大丈夫?」
「なんとか」
真後ろからは敦也と友達とおぼしき人の声が聞こえる。
私と拓郎は、はぐれない様に手をつなぎ直して空にまた目を向けた。
しばらく花火に集中していると、モゾ……と背中を撫でるような感触がした。
気のせいかなと思っていると、それはゆっくり上下を行き来し始める。
敦也だ。私はすぐに気が付いた。
けれども身動き一つ取れない状況に、逃れる事も叶わない。
最初は一本の指で背中の中心をなぞる様に、次は全ての指でじっくり熱を伝える様に。
その触れ方は、付き合っていたあの頃を思い出させる。
思わず声をもらしそうになって、慌ててそれを押し殺す。
隣に拓郎がいるのに。
そう思いながらも、私の全神経は背中に集中してしまう。
目の前の花火は霞んでいて、何を見ているのかも分からない。
そっと、空いたもう片方の手を背中に回すと、私の背中を撫でていた指が絡められた。
この花火が終わるまで、ほんの少しの間だけ―――