キャンバス【TABOO】
アトリエは、それ自体が芸術品のようだ。
「汚くてごめん。色があちこちに付くんだ」
拓磨の綺麗な笑顔に心臓が飛び跳ねた。
「あのモデルは彼女?おめでとう」
微笑んだ私に彼は首を振った。
「片思いしてる人。数年経った姿を想像して描いた」
「あの絵を見たら、誰だって落ちちゃうよ」
沢山の作品の中に、大学時代の私の絵もあった。
「懐かしい。私、おかしなこと考えてた。優しく細く、力強く太く描く筆の動き・・。もし、キャンバスが生きてたらどんな気持ちになるのかなって」
「掌で試してみる?」
拓磨は悪戯っぽく微笑んだ。
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