お弁当の時間。
どうして隣りのクラスの彼が、毎日私の元へやって来るのかと言うと、一週間前に話はさかのぼる。



その日、私は寝坊してしまい、自分のお弁当を作ってくるのを忘れてしまった。


「どーしよ…。お昼抜きなんて耐えらんない…」
友達の日向小春(ひなた・こはる)に、軽く愚痴ってみる。

「え?お弁当忘れてきちゃったの?」

「うん…。」

「しょーがないなぁ。これ、分けてあげる。」
そう言って小春は、サンドイッチを二袋取り出した。

「両方食べていいよ。」
「両方!?小春の分は?」
「あるからいいよ。ほら。」


気付けば小春の前には、たくさんの菓子パンや、ジュースが並んでいた。
「あ~。小春モテるからね~。」

それは、小春ファンによる、いわゆるプレゼントだった。

可愛い、性格いい、スタイル抜群。この三拍子がそろっていてモテない人は、まずいないだろう。
小春は、そんな三拍子がそろった希少価値のある女の子。男の子からはもちろん、女の子からも人気がある。


「モテてるって…、そんな事ないよ!」

真っ赤になって全否定する小春は、いつ見ても可愛い。

「モテるじゃん!この貢ぎ物が何よりの証拠!」
「貢ぎ物って…。まぁ、お昼ご飯には困らないけど、食べきれないから…やっぱりちょっと困る時があるかな。」

「そっかぁ。モテるのも考えものなんだねぇ。」

そう言いながら、私はもらったサンドイッチに手を伸ばしかけた、その時、


「そうだ!桜ちゃん、」
いきなり私の伸ばしかけた手を掴んだ小春は、声を少し小さくしてこう言った。



「健介君からお金借りちゃえば?」



< 3 / 13 >

この作品をシェア

pagetop