お弁当の時間。
「悪ィ、悪ィ!自販機が混んでてさぁ…」


不意に後ろから声がした。

今は、会いたくない人の声。

振り返ると、ペットボトルのお茶を二本抱えている健介がいた。



「…桜?」


ぎょっとした顔で近付いてくる。


「どうしたんだよ?何があったんだよ?」


「別に…、何でもないよ。」

わざと笑顔を作る。

大丈夫。

私は、強いから。



「…別にじゃねーだろ?ちゃんと言えよ。」




「じゃ、聞いていい?」

口が勝手に動いてる。
そんな事言うつもりないのに。



「…何だよ、いきなり。」


「好きな人、…いる?」

一番聞きたくて、一番聞きたくなかった質問。

(どうか、私にとって良い答えが返ってきますように…)


知らず知らずのうちに、心の中で願っていた。





「いるよ。」




あっさりとした答えが返ってきた。
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