不良校サバイバル~イケメンたちとtrouble days~
会話が途切れると、稟はピアノの上に置いていた、彼がいつも持ち歩いている黒の本を手にとった。
題名のない本。
絶対にどこかに置き忘れたりすることはなくて、稟を見る度に必ずと言っていいほど、その本を腕に抱えてる。
「その本…」
「“ちいさな双子のピアニスト”」
“ちいさな双子のピアニスト”
稟が何もない表紙を手でさらりと撫でて答える。
「ジョーダン・ベッフェルが最初に書いた小説」
「ジョーダン・ベッフェル…?」
「……。そろそろ総也も戻ってくるんじゃない?あんたと遊んでる暇ないから俺はもう構ってやらないよ」
中途半端に意味深な言葉を残して、稟は振り向くことなく部屋から出ていく。
やっぱり稟ってちょっと難しい子だけど、ちゃんと優しい心を持ってる。
だってわざわざ、あたしなんかに言う必要もないことを教えてくれたんだもん。
あんなに無口で他人とはほとんどなれ合おうとしない稟が。