不良校サバイバル~イケメンたちとtrouble days~
あたしがピアノ室を出ると、丁度テラスの方向から総也が戻ってくる姿が見えた。
「総也!」
「さゆ?」
総也らしくない曇った表情。
さっき稟が言っていた。
総也は案外、他人を気遣うことのできる人物なのだと。
きっとあたしに言ったことを気にしているのかも。
「ごめん、さゆ。さっきは」
あたしの予想は見事に当たって、あたしの前にやって来た総也は申し訳なさそうに謝罪の言葉を述べた。
「ううん。あたしも何も知らなかったのに知ったような口きいてごめん」
「いや、さゆは悪くねぇよ」
「ううん。今稟から大方の話は聞いたから…。あたしも出すぎたことをしたなって思ったし」
「稟が…?」
余程意外だったのか、稟の部屋を振り返って「稟が…」もう一度彼の名前を呼ぶ総也。
確かに、あの寡黙を極めてる稟が自ら自分たちの過去の話をするだなんて想像つかないよね。
だけどあれは、稟ならではの総也への気持ち。
きっと稟は、総也のことを1番に思ってる。
だって、他にはいない、たった1人の双子の兄弟なのだから。