不良校サバイバル~イケメンたちとtrouble days~



は……?




声にこそならなかったものの、心の中の言葉が表にあらわれていたらしい。





「違うか?俺にはそう聞こえる」


「な…、なにそれ」




誰にも言ったことなんてなかった俺の気持ち。



ちゃんと隠し切れてたはずだし、顔になんて出したことなかった。




なのに……。


初めて会ったばかりのこの人に言い当てられてしまって、いつもみたいに上手く切り返せない。





「俺が総也を羨むとか妬むとか、どの辺りにその要素があるわけ…」



苦し紛れに言った言い訳もその意味をなしてはいないだろう。



奴は何も言わなかった。


ただじっと俺の瞳を見つめて、何もかもを見通すような目をしてその一点から揺るがない。





俺はピアノなんて、はじめから興味はなかったし。


総也だけにその才能が認められて、羨ましいと思ったことも妬ましいと思ったことも……ない。





とは、とても言い切れないけど、それを言葉にするにはいくらか抵抗があった。





「お前」



奴が俺に呼びかけて、椅子から立ち上がった。



何をするかと思えば、奥の部屋に行ってから、何かの本を持って戻ってきたその人。





題名のない、本だった。










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