翔子の恋


私はついに家出を決意した。

義父が留守の間に荷物をまとめて部屋を出た

リビングの前を通ると


「翔子!!」


振り向くと母が驚いた顔していた。


「そんな大荷物…どこ行くの?」


「……お母さんには関係ないでしょ」


「翔子!!」


「うるさいなぁ!…私、もう限界なの!お母さん気づいてるでしょ!私がアイツに何されてるか…分かってたでしょ!もう許してよ、離してよ……」


涙が次から次へと溢れ出す。

今まで溜めていたことを吐き出すように



「……ごめんね…翔子…ごめんね…」


「え?」


母は肩を震わせていた


「お母さん、翔子の事…助けてあげられなかった…」


「……」


「…お母さん、失格だね」


弱々しく笑う母を見て

辛いのは私だけじゃなかった
この人はこの人で何か抱えてたんだな…

そんな風に思えたら私はもう母を憎めなかった。



「いってらっしゃい…」


「え?」


「いってらっしゃい、気を付けてね…」



優しく笑って私を抱きしめた。



「……お母さん…」


「ごめんね…」


「…うん…」


「ほら、あの人が帰ってくる前にいってらっしゃい…」


「お母さん…」


「何?」


「お母さんは、アイツを愛してるの?」


「……」

母は困ったように笑っていた


「…あの人とは、離れられないの…」


「なんで?」


「…なぜかしらね、分からないわ…」


「……」


「あっ…そうだ!少し待ってて」


「うん…」



母は慌てて部屋の奥へ戻り何か紙を持ってきた。


「…ここに、竜太の居場所が書いてあるから…」


「えっ?なんでお母さん知ってるの?」


「だって、お母さんだもん!」


あの時の母の顔が今でも忘れられない。


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