翔子の恋
「クミちゃんは彼氏とかいるの?」
私は適当な男には本当の名前を教えない
呼ばれたくないから。
「いると思う?」
「いたら嫌だー」
「なんでよー?」
「俺、クミちゃんが好きだーーー」
マイクを握りしめて
バカみたいに叫ぶ
「えー本当?嬉しいなぁ…」
「俺もすきだよー」
もう一人の男は完璧にお酒にのまれてて
呂律も回ってないし
今にも寝そう…
『さて、今日はこの人でいいか…』
マイクを持ったまま
私の髪を弄る男の膝の上に乗った。
「ク……クミちゃん、どうしたの?」
驚いたフリして
顔はとても喜んでた
実際すでに反応してるし
「どこか行かない?」
「どこかって?」
「クミの行きたい場所、分かるでしょ?」
「え……いいの?」
めんどくさい男…
こんなやり取りもういいからさっさと連れていけよ!
イライラするけど
顔には出さない
ニコニコして相手を誘う。
「ここじゃダメ?」
「こんな場所じゃ嫌だよ…クミは広い所がいいな」
「…うん、分かったよ…すぐ行こう!」
私の気が変わるのを恐れて
男は一万円札を机に置いて私の手を引き部屋を出た。