君の左手が気になるのは、なぜだろう?
「よう」とアイツ。
バツが悪そうな顔をしている。

「じゃ、先行ってるわ」と
ニヤニヤしながらほかの男子が
去っていく。


アイツは左手で、
しきりに頭をかいている。


よく見ると、キレイな長い指だ。


沈黙。


しびれを切らして、
私が聞いた。


「何?」


「いやー、あのさぁ…
アイツらが言ってたんだけど、
英語の授業で、
オレのこと、助けてくれた?」


―ようやく気づいたか、このバカ!


おもいっきり、
責めてやってもよかったのに、
さっきのニヤニヤ男子たちの
顔が浮かんだら、
そんな気持ちが冷めた。


私はニッコリ、何気ない顔で言った。

「え?なんのこと?」
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