人妻と青年
「どうぞ」
扉を大きく開けて中に入るように促せば、彼は部屋に上がった 。黒色の靴を脱げば、ボーダーの靴下が現れる。細やかな場所までお洒落な人だ。細身の身体に、すらりと伸びた足。ああ、どうしても、比べてしまう。
幸子は自室に青年を招こうとするが、そのとき、自室の床に置きっ放しになっていた黄緑色のノートを見つけた。見られては不味い、と彼女は急いで手に持つ。
そうして振り返れば、青年が酷く真剣な面持ちで、扉の外からこちらを眺めていた。幸子は唾を飲む。
「どうしたの?あ、お茶なら今すぐ」
「今日ここに来たのは、他でもない、あなたに大切な話があったからです」
心の中の感情が波打つ。不安と、緊張と、喜びが、波の中で色濃く光った。
「ぼくにしてはもらえませんか」
迷うことのない、真っ直ぐな言葉が放たれる。