月のあかり
「だけどさ、満央はお姉ちゃんと双子みたいにそっくりだったんでしょ?」
「そうだよっ」
「だったら満央のことも、彼にとっては好きなタイプの女の子なんじゃないの?」
ぼく特有の悲観的妄想癖は、すでにその思考にまで到達していた。
「‥‥‥」
満央は否定的な表情を返してきたけど、明確な否定を言葉では示さなかった。
そして、そのあと急に何かを思い出したかのように「あっ」と小さく声を上げ、目をパチパチさせた。
ひょっとして高梨との過去の関わりの中で、何か心当たりでもあるのだろうか‥‥‥。
「そうだ、いいもの見せてあげる」
満央はそう言うと、サンドイッチや自主製作の名刺を見せてくれた時のように、カバンをガサゴソとまさぐり始めた。
この話の流れから、いったい彼女は何をカバンの中から出そうというのだろう。
ぼくは皆目見当がつかず、ただ唾をゴクリと飲み込んでその時を待った。
「はい、特別だよっ」
勿体ぶるように差し出したそれは、一枚の写真だった。
運転しながらでは被写体が何なのかよく分からなかった。
ぼくは今度こそ安全運転を履行する為、取り敢えず車を路肩に寄せて停車させた。
「これは‥‥?」
改めて満央の差し出した写真を確認すると、そこに写っていたのは2人の満央だった。
《2人の満央》まさにそう思わざるを得ないほど瓜二つの2人が、写真の中で顔を寄せ合い微笑んでいる。