月のあかり
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 ぼくたちは約束をしていた。
 あかりは終電までのアルバイトだから、お店の閉店時間とは関係なく、23時半には仕事を終えてお店を出てくることになっていた。
 
 
 こういうお店は料金が時間制で区切られている。
 1時間の制限時間では彼女とのひと時が満足出来る訳もなく、かといって時間延長を出来るほど、単なるサラリーマンのぼくの懐に余裕があるはずもない。
 あかりも「余計なお金を使わせたくないの」と言って、ぼくを宥めるように声を掛けてくれた。
 
「嶋さんと、もう少し話したくて‥‥‥」
 
 さらにそう言って、これは接客の延長にあたる『アフター』と呼ばれる業務的な付き合いではなく、あくまでも仕事が終わったあとのプライベートな時間であることを強調してくれた。 
 
「お待たせです」
 
 お店の薄暗い裏口から出て来た彼女は、月明かりに照らされてニッコリと笑顔がこぼれる。
 
 彼女の服装はジーンズとグレイのトレーナーで何だかパッとしないけど、逆にいえば小ざっぱりとした清潔感と、生真面目な女の子の独特なオーラがみなぎっていた。
 
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