月のあかり
満央はコーヒーカップの乗ったトレイを机の上に置くと、力尽きてしな垂れるようにベッドに座った。
ぼくは満央に手を差し伸べて立ち上がらせると、ためいき色に染まるこの部屋の真ん中で、ギュッと強く抱き締めた。
なぜかその時、風もない室内で満月のタペストリーが、ひらりと揺れたように見えた。
「にゃあ」
すると今までにも何度か聞いたことのある、哀愁を帯びた満央の不思議な反応。
猫のように鼻に掛かる声で満央が鳴いた。
あるいは《泣いた》のかも知れない。
きっと心の底で。
ぼくは後ろ髪を引かれる思いのまま、満央の部屋と《ためいき色》の部屋を後にした。