月のあかり
それでも警察官が、怪訝そうな顔で睨むようにこちらを見続けていたから、無邪気に振る舞っていた満央もマズイと思ったのだろう。
隠れるように深くシートにもたれて首を竦めた。
信号が青に変わり、パトカーは赤色灯を回して急発進すると、猛スピードで走り去った。
「このイタズラっ子」
叱るような真似でぼくが言った。
満央は下唇を出してスネた顔を作り、すぐに「あははっ」と笑顔に変えて見せた。
車を走らせると、路肩に連なる外灯が無数の流星のように流れて見える。
短いトンネルを幾つも抜け、再び信号待ちで停車した時に満央の顔を覗くと、気持ち良さそうに目を閉じて、スヤスヤと寝息をかいていた。
『こりゃあ、本当に父親代わりだな』
嬉しいやら悲しいやら、複雑な感覚のまま、隣のシートで眠る満央を起こさぬよう、青に変わった信号の前で、ゆっくりと車を発進させた。
「満央、着いたよ」
「う、うん」
肩を叩いて起こすと、また眠そうに片目を開けた。
ぼくは5年前から、このワンルームマンションで独り暮らしをしていた。
正直、ここに女性を連れて来るのは初めてではなかったが、かといって毎度、毎度という訳でもなかった。