月のあかり
 
 そして夜空に浮かぶもう一人の傍観者も微笑んでいるように見えた。
 
 
「ねえ、願い事しようよ」 
 と満央が言った。
 
「願い事って、ふつう流れ星にするんじゃないの?」
 
「だって、流れ星だとすぐ消えちゃうでしょ」
 
 そう言って満央は真剣な表情で目を瞑り、手を合わせた。
 
 月に向かって祈りを捧げる‥‥‥
 
 古今東西、そうしたことは良い行為とされたり、逆に呪術などの悪しき儀式として決め付けられたり、月への祈念に纏わる諸説は様々らしい。
 
 だけど、瞬く間に消えてしまう流れ星にではなく、いつも二人を見守ってくれる『月』に願い事をしたい。
 そんな純朴な思いに満ち溢れた、満央の素直な心根が読み取れた。
 
 満央が心の中で何を祈っているのか分からないけど、ぼくも彼女の隣で月を見上げて手を合わせた。
 
 
 
「 にゃあ 」
 
 
 何処からともなく猫の鳴き声がした。
 
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