月のあかり
ぼくは目を開けて暗がりの屋上を見回した。
満央もびっくりしたように立ち上がった。
よく見ると、ぼくらの目の前には一匹の猫がいた。
白地にグレイの斑で毛艶のいい猫が、ぼくらのことをじっと見つめていた。
「あっ、かわいい!!」
満央が手を差し伸べて近づくと、猫は甘えるように長い声で鳴き、人懐っこく自分から満央の手に擦り寄った。
「ねえ、なんでここに猫ちゃんがいるの?」
猫を抱き上げながら満央がぼくに訊いた。
でもそれは、ぼくのほうが誰かに訊きたい質問だった。
このマンションはペット禁止のはずだし、なぜ屋上にいるのかが不思議だった。
それにこの猫、何処かで見た気がした。
満央は猫を抱いたままベンチに座った。
「お前どこの子だ? どこから来たんだ?」
ぼくがそう語り掛けると、猫はぼくのほうを向いて返事をするように鳴いた。
そうだ、思い出した!!
間近でその鳴き声を聞いて、ぼくの身体には雷に打たれたように強烈な電流が走った。
「その猫、満央がバイトしてる、あの高層ビルの下にいた猫にそっくりだよ」
「えっ、そうなの?」
満央も驚いていた。
「ねえ、ねえ、君は新宿にもいたの?」