月のあかり
ぼくらは手を取り合って南京錠を掛けた。
カチッ
鉄筋コンクリートの壁に、鍵の掛かる音が小さく響いた。
3階に下り、ぼくは自分の住まいに満央を迎え入れた。
彼女は玄関に入るなり目をパチパチさせ、物珍しそうに部屋の中をキョロキョロと見回していた。
ぼくは平静を装ってはいたけど、実際は、ふぅ、とため息をついて胸を撫で下ろしていた。
いつもならぼくの部屋は、独身男性特有の調子で、見るも無残に散らかっている。
ところが2日ほど前に妙な胸騒ぎがして、仕事から帰るや否や、部屋の隅々まで入念に大掃除したばかりだった。
勿論、過去に付き合い、出入りしていた女性の影を感じさせる遺物などは、大掃除以前の遠い昔に跡形もなく処分してあった。
「意外とキレイにしてるんだねっ」
「ああ、ぼくはキレイ好きだからさ」
反射的に取り繕ってそう言うと、満央は訝しげな目でぼくを見ていたが、すぐに見透かしたようにクスッと笑って何も言わなかった。
その後、ぼくらは冷えきった身体を温める為、一緒にバスルームに入ってシャワーを浴びた。