月のあかり
 
 明るいバスルームで全裸を見せ合っても、今日の満央はあのラブホテルの時ほど恥ずかしがらず、シャーッという猫を真似た威嚇も見せなかった。
 子供が戯れ合うように泡まみれになって、お互いの身体を洗い合うと、やがてどちらともなく大人の官能的な抱擁に移行した。
 
 ぼくたちは久しぶりにキスをした。
 
 土砂降りのようなシャワーの雨の中でのキスは、まるでお互いの酸素を分け合う救命行為に似た、熱情の籠もった深い接吻だった。
 
 気持ちの高揚した二人はバスルームを出た後、濡れた身体もほとんど拭かないまま、ベッドの上へと雪崩込んだ。
 
 シャワーで上気した肌を擦り合わせて、ぼくらはラブホテル以来の2度目のセックスをした。
 
 
 
「直樹さん‥‥」
 
 行為の途中で、満央は胸を押さえて苦しがった。
 
「大丈夫か!?」
 
 慌てて律動を止めた。
 息が乱れて苦しそうな満央を見て、以前も彼女が同じような状態になったのを思い出した。
 
「ねえ、直樹さん。ちょっと休んでいい?」
 
「ああ、無理しなくていいよ。休もう」
 
 ぼくはタンスから、自分では普段あまり着ない男物のパジャマを出して、満央に着るように勧めた。
 ずっと寒空の下にいて夜風を浴びていたから、体調を崩したのかも知れないけど、ひょっとしたら満央の身体が、どこか病んでいるのではないかと心配になった。
 
 直感的にそう思った。
 
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