月のあかり
 
「ねえ、ヒメはどこ?」
 
 背後から声がした。
 振り向くと気持ち良さそうに寝ていたはずの満央が、上半身を起こして目を擦っていた。
 
「ごめん、起こしちゃった?」
 
 ぼくが腕枕を引き抜いたせいで、寝付いていた満央を起こしてしまったと思ったけど、彼女は夢にうなされて目が覚めたと言った。
 
「夢の中にヒメが出て来たの」
 
「夢?」
 
 ぼくは反射的に訊いた。
 満央はいつものように目をパチパチさせた後、悲しそうな表情で答えた。
 
「そう、ためいき色の夢」
 
 ぼくは言葉を返すことが出来なかった。
 満央は続けてこう言った。
 
「ヒメがね、夢の中で私を呼んで鳴くの。満央、満央って」
 
「そ、それで?」
 
「訳あって猫の姿になっているけど、もう一度満央に会いたくてここに来たんだって、そう言葉を話してまた鳴くの。満央、満央‥‥って。私がびっくりして『お姉ちゃん?』って聞き返したら何も答えてくれなくて、急に目が覚めたの」
 
 ベッドから出ると、満央はぼくの側に寄り添った。
 
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