月のあかり
 
 そう言うと、返事をするようにタペストリーが風になびいて揺れた。
 
「舞」
 
 立ち籠めるためいき色の霧。
 
 部屋に置き去りにされたタペストリーとベッド。
 
 
 もうそこに舞の姿はなかった。
 
      ※
 
 
 目が覚めると、時刻はまだ夜半を過ぎた頃だった。
 
 起き上がって窓のカーテンを開け空を見上げたが、ぼくの部屋からは月も星も見えない。
 
 
 満央‥‥‥。
 
 君はいま、この夜空の下でどんな夢を見ているんだい?
 
 
      17
 
 高梨と会ったのは次の日の夕方だった。
 
 彼が入り浸っているあのパチンコ店に、ぼくのほうから出向いて行った。
 
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