月のあかり
「満央は?」
ぼくは、何しに来た? という質問への返答ではなく、満央の姿が見えないことへの心配と不安を、そのまま彼にぶつけた。
高梨は遠くを見るように目を細めて、あぁ‥‥というため息を漏らし、再び苦笑いを浮かべた。
「昨日別れましたよ」
いや、正確にはフラれましたよ。高梨はそう言い直して、顎の不精髭を摘むように擦っていた。
「いまどこに?」
ぼくは急かすように訊いた。
今度は高梨のほうがぼくの質問への返答ではなく、悔やむ思いを吐き出すように小さく口を開いた。
「満央には悪いことをした」
呟くような高梨の言葉を、ぼくは黙って聞いていた。
「ぼくが付き合わせたばっかりに、彼女もスロットにのめり込んでしまった」
初めてこのパチンコ店へ満央を連れて来た時に抱いたぼくの不安は、今頃になって的中していた。
彼女はせっかくバイトで貯めた数十万円の貯金までを、依存症のごとく麻痺してしまった金銭感覚によって、わずか一ヵ月余りのうちに食い潰してしまったらしい。
数十万円という金額は、19歳のフリーターの女の子にすれば、身を切り裂くような大金だったはずだ。
「なぜそんなことに?」