月のあかり
第9章 月のあかり
      18
 
 
 その日の夜、ぼくはまた《ためいき色》の微睡みの中で君のことを想っていた。
 
 君の名前は望月満央。
 
 出会った頃は『あかり』と名乗っていた。
 
 無邪気な子供のようにはしゃいだり、借りてきた猫のようにおとなしかったり、可愛らしくも掴み所のないその挙動。
 それでいて整った目鼻立ちのわりに黒髪のシンプルな髪型や、地味な服装の調和が、より一層に君の不思議な内面の魅力を引き立たせていた。
 
 満央‥‥‥
 
 君は街中でも人目を気にせず戯れついてきたり、手を引っ張ったりして甘えてきた。
 初めてのデートの時は、ぼくも周囲の視線が気になったりして気恥ずかしかったけど、あの頃はすっかり心地よくなっていた。
 
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