月のあかり
「たまにはどっかに連れていってよー」
「どっかって、どこ?」
「うーんとねぇー‥‥‥」
そう、あの時あんな場所に君を連れて行かなければ、高梨とも再会せず、スロットなんかのギャンブルに依存させることもなかった。
いや、それ以前にぼくらが離れ離れになることすらなかったかも知れない。
満央‥‥‥
君は『月のあかり』ではなく、また夜のネオン街の『あかり』に戻ろうとしているのかい?
ぼくは君にとって『どんな存在』として接すればいいのだろう?
ためいき色に包まれながら、ぼくの耳には「ねえ?」と尋ねる君の口癖がこだました。
※
「ねえ?」
いつの間にかぼくは車を運転し、左の助手席には満央が座っていた。
見慣れた風景。
安心するポジション。
「すごくきれいだね」
彼女はフロントガラスの前方を指差した。