月のあかり
 
「じゃあ、それってどういうことか分かる?」
 
「どういうことって?」
 
 ぼくは質問の意味が理解出来なかった。
 
「太陽と月が一緒に出ているからだよ」
 
 満央はそう言い放った。
 
「そうか」
 
 太陽の光の当たる部分が完全に月の裏側へと移行した時、月の表側は暗い部分となって、地上から見える青い大気にかき消されてしまうのだ。
 
「つまり、太陽が強く輝いている昼間は、月は光る必要がないんだね」
 
 そうそう、と頷いて満央が言った。
 
「だからこそね、月のあかりは夜道に迷った人を照らすためにあるんだよ」
 
「うん」
 
 満央は月、貴方は太陽であり地球なのよ‥‥‥改めて満央の言葉に舞の言葉がリンクした。
 
 彼女は再び真剣な顔でぼくを見つめた。
 
「直樹さんが見ていた《ためいき色》って、本当は悲しい色じゃないんだよ」
 
「えっ?」
 
「ほら、よく見て」
 
 満央が見上げて指差す天空のスクリーン。
 
 水色の空、空、空‥‥‥
 
 
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