月のあかり
 
 満央の姿が月と重なると、微かに光を残していた月の輪郭も、ためいき色の空にゆっくりと溶けていった。
 
 満央‥‥‥
 
      ※
 
 
 ぼくは耳たぶを濡らす自分の涙で、その夢から覚めた。
 
 
 満央が亡くなったのは、それから3日後のことだった。
 
 心臓疾患による突然死。
 
 久しぶりに来た長澤ユカからの連絡は、悲報というかたちの最後の報告となった。
 
 満央は夜の勤め先から帰宅したあと、母親に「飲み過ぎたから、しばらく起こさないでね」と言い残し、自分の部屋に戻り眠りについた。
 しかし、10時間以上も起きてこない満央を心配し、母親が起こしにいくと、満央は自分の部屋ではなく、舞の部屋のベッドで横になり、眠ったまま冷たくなっていた。
 とても安らかな表情だったという。
 
 
 ぼくは葬儀には参列しなかった。
 彼女の死をどこかで予感していながら、いざその事実に対して向き合うと現実感を感じられず、素直に受け入れることも出来ずにいた。

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