月のあかり
エピローグ
エピローグ
「にゃあ」
「にゃあ」
半月ほどたったある夜、ぼくは聞き覚えのある猫の鳴き声に、浅い眠りから目を覚ました。
時間はまだ真夜中だった。
満央の死から、ためいき色の夢を見ることは無くなったが、深く寝付くことの出来ない夜が続いていた。
「にゃあ」
まさか‥‥‥ぼくはびっくりして飛び起きた。
その鳴き声は玄関のドアの向こうから、何とも形容し難いほどの、切な気な色合いを滲ませた声で聞こえてくる。
ぼくは慌てて玄関に行き、そっとドアを開けた。
マンションの廊下の薄明かりに照らされて浮かび上がったのは、ぼくと満央が名付けた、あの《ヒメ》だった。
「元気だったか?」
「にゃあ」