月のあかり
 
「そのストラップ付けてくれてたんだね」
 
「はい、ちょっと変わったストラップだから気に入って付けてるんですよ」
 
 そう言ってぼくらはお揃いのストラップを見せ合った。
 内蔵されている水銀電池で、電波を感じると赤く光が点滅する優れ物だ。
 どちらかというと男の子向けのデザインだったから、まさかそのストラップをあかりが付けてくれてるとは思わなかった。
 それとも今日会うぼくに気を使って、律儀に付けて来てくれたのだろうか。
 
 毎日のようにメールで会話をしていながら、いざ一週間ぶりに会うと、お互いに見慣れない私服姿やよそ行きの格好に戸惑いを隠せなかった。
 そして挨拶もそこそこに済ませると、早速ぼくのエスコートで、近くのボウリング場へと向かった。
 
 しかし本当にボウリングなんかでいいのだろうか? 
 ひょっとして彼女は、もっとお洒落なデートを望んでいたのではないだろうか? 
『本気でボウリングするつもりなの?』なんて彼女は興醒めしてはいないだろうか?
 
 あかりと並んで歩く数分間の道中に、またマイナス思考な妄想が、もともとぼくの性根に染み付いている小心癖を、さらに震わせ翻弄した。
 
 
 
 ボウリング場に着くと、他にもぼくを戸惑わせることがあった。
 ここには以前にも一度だけ来たことがあったけど、その時とはシステムが少し変わっていた。
 今は会員制になってしまい、わざわざ入会して会員カードを作らないとプレー出来ないことだった。
 
 ぼくは渋々と入会用紙に小面倒臭い記入をした。
 
< 24 / 220 >

この作品をシェア

pagetop