月のあかり
ぼくは慌てて取り繕うように言った。
まったく情けない話だ。
歳の離れたぼくなら、起伏の激しい情緒の変化を見せる彼女のことを、寛大な包容力をもって受け止めてあげれるなんて、とんだ自信過剰な思い込みだった。
それに加え、深層心理に巣くう脆弱なもう一人の自分が、対照的で矛盾した虚勢を張っていただけなのかも知れない。
これではまるで週刊誌の裏表紙にあるような、『10日で10キロ痩せました』とか『あと5センチ背が伸びます』なんて、いかにもうさんくさい誇大広告に、限りなく類似した疑わしさだと思われてしまう。
いや、いくらあかりが勘の鋭い女の子でも、超能力者じゃあるまいし、まさかそこまで見透かされている訳じゃないだろう。
「そう、そうだよね。わかってるよ」
ぼくは努めて冷静を装い、背筋をすっくと伸ばして見せた。
「‥‥うん」
あかりはまた視線を逸らして悲しげな表情になり、ぼくの胸元を見つめるように俯いた。
「じゃあまた連絡するよ」
ぼくは気丈に振る舞いながらも、その振る舞いを悟られないように、ごく自然な口調で今夜の『別れ』を切り出す具体的な言葉を口にした。
あかりはまた「ふん」と声にならないハミングで頷いた。
あかり‥‥
そう心の中で呟くと、ぼくは無意識に彼女を抱き締めていた。