月のあかり
きっとそんな《落ち》のある話でしょ?という満央の半信半疑な推測が窺えたが、ぼくは「違うよ」と否定した。
「マイって名乗ったんだ」
そう言うと、満央はびっくりしたように添い寝をしていた上半身を起こした。
「‥‥マイ?」
「そう、マイって言ってた」
確認するように訊く彼女に、ぼくも上半身を起こしながら答えた。
「それ、私のお姉ちゃんの名前だよ」
「お姉ちゃん?」
「うん、二つ上のお姉ちゃんがいたの」
満央は少し悲しそうな声で言った。
「いたの‥‥って?」
「今は、もういないの」
「えっ、いないの‥‥って?」
ぼくの執拗過ぎる質問に、彼女は暫く沈黙を保ってからこう言った。
「2年前に病気で亡くなったの」
「そうなんだ。ごめん。
悪いこと聞いちゃったね」
ぼくが申し訳なく沈んだ声で言うと、満央はまた小さく首を横に振った。