月のあかり
「ねえ、直樹さん」
「ん?」
「もう、お姉ちゃんの話はよそう」
「そうだね。ごめん」
満央は「ううん」と小刻みに首を振りながら、上半身を起こしていたぼくを押し倒し気味に寝かせると、自分もまた添い寝をするように横になった。
再びぼくらは数センチの至近距離で顔を寄せ合った。
キスした時はお互いに目を瞑っていたけど、いまこうして間近に満央の顔を見つめると、キリッとした目の形の良さと深みのある瞳の色が、ぼくには勿体ないぐらいの美少女だということを改めて痛感させられる。
それは日本人形ほど涼し過ぎず、フランス人形ほどクドく誇張されたものではない。
絶妙なバランスの取れた美形な目元だった。
「ねえ‥‥」
囁くような彼女の声が合図になって、ぼくらは小鳥がついばむような軽いキスを何度も重ねた。
そして、吐息漏れるような深みのある接吻へと、次第に発展していった。
「何だか夢みたい」
徐にキスを中断させると、満央がそう言った。
「本当だね」
ふと部屋の中を見回すと、付けっ放しのテレビはブルー画面になっていて、室内の白い壁や天井へ間接照明のように淡く反射し、二人は幻想的な薄い水色の空間に包まれていた。