月のあかり
「ねえ、聞いてるのぉ?」
「えっ、うん。営業先だろ」
単なるパチンコ店だよ、と言うと満央は「行きたい」と言い出した。
「営業先はマズイよ」
「なんでぇ?」
いくら遊技場と言っても、一応仕事の取引先だ。
まさか不釣り合いな若い彼女を連れて、堂々と遊びに行く訳にもいかない。
(ちなみにパチンコの場合、遊戯ではなく遊技と記する)
「なら、別のお店でもいいよ」
「じゃあ、この通りに何軒かあるから、そこでいい?」
「うん、いいよ」
結局彼女に押し切られ、街道沿いのパチンコ店にちょっとだけ寄ることになった。
きっと、未知な場所への彼女の好奇心なのか?
取り敢えず場の雰囲気だけでも見せてあげれば、それで彼女は満足するだろう。
ぼくはそんな安易な気持ちで高を括っていた。