広い背中
そう伝えてみようかと思った。

もう逃げないから、今までみたいにそばにいて、って。

それだけなら、言える気がした。

くっとあごを上げて誠を見ると、誠はいつもの誠だった。

「ミイラ取りがミイラになっただろ?」

なんのことかわからずに首を傾げると、誠は立ち上がって私の目の前に座りなおした。

そして今まで聞いたこともない甘ーい声で、こう言ったのだ。

「俺のことが好きになったか?」

マンガだったらきっと、ボンッと頭が爆発していたと思う。

あまりのことに、声が出てこない。

カーッと頭に血が上って、恥ずかしさに顔が火照る。

「お前が求めてくれるのを、俺はずっと待ってた」

「お前が好きな俺を欲しいんじゃなく、お前が俺を好きだから欲しいと思って欲しかった」

「もっと時間かかると思ってたけど、自分で自分を穴に落としてくれたな」

そういって、誠は私を抱きしめた。

「お前が好きだよ」

そのまま、抱き上げられた。

状況に頭がついていかなくて、「え、え、え、」と同じ言葉ばかり繰り返す私を、そっとベッドに下ろすと、誠はこの前の続きをするように頬を包み込んだ。

「好きだよ」

その言葉と共に、おでこに、まぶたに、鼻に頬に、キスをされる。

「やっと、手に入れた」

そうして、甘いキスをくれた。






―――な、草食じゃなかったろ?


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