広い背中
だめ押し、とばかりにもう一度口づける。

すると、彼はものすごい勢いで走り出した。

「えっ、ちょっと! 待って、お、落ちる!!」

私の制止なんてお構いなしに、誠は走った。

私は振り落とされないように必死で彼にしがみつき、振動で吐き気が込み上がってくるのを耐えた。

数分後、やっと誠が止まったのは彼のアパートの前。

うちまで送ってくれるんじゃなかったの? と聞きたいけれど、それより何より...

「き、気持ち悪い...」

声を振り絞ってそう言うと、誠はやっと私が酔って歩けなくなったからおぶっていたのだということを思い出してくれたらしい。

「ご、ごめん! 大丈夫か!?」
「大丈夫じゃない...」

もうちょい我慢して、と誠はポケットから慌てて鍵を取りだし、部屋の鍵を開けた。

ベッドの上に優しく下ろされて、私はそのまま横になった。

「大丈夫か? 水持ってくる...」

台所へ行こうとした彼の手を咄嗟に掴んだ。

「ねぇ、本気で私を好きなら、奪って見せてよ」

もっと私を欲しがって見せて。

顔を歪ませながらも覆い被さってきた彼に、私はバレないように笑った。
 
 

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