広い背中
荒い呼吸も収まって、私が落ち着いたところで、誠はその大きな手で私の髪を整えながら言った。

「あのな、言っとくけど俺は草食じゃねーぞ」

「どこがよ」

あんたが草食じゃなきゃ誰が草食なんだと言ってやりたい。

そして私は一言一句間違わずにそう言った。

誠はそんなことを言われても平然として首を振る。

「俺は草食じゃあない」

「じゃあこの状況はなに」

「俺は時期を見誤ったりはしないだけだ」

「どういうこと?」

誠の言っていることは、私にとったら支離滅裂だった。

時期とかいって、ただ意気地がないだけでしょって馬鹿にしてた。

「俺は、お前のとっかえひっかえしてる男たちと同じ立場になるつもりはない」

―――そう言われるまでは。

「そんなつまらんものに興味はない」


なぁんだ。ばっかみたい。

結局、私の勘違いってことね。

誠は私の恋人になるつもりなんてなかった。欲しいなんて思ってなかった。

あー私ってばイタイ女。

何年も、こいつは私に気があるんだなんて勘違いしてた。

「なんなのよ・・・ばかみたい」

悔しくって情けなくって、涙が出てきた。



―――私は欲しくなったのに。




今日のことは酔った女のしたことだから。
だから忘れてよね。

私も、こんな惨めな想いはもう忘れる。

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