TABOO 短編集
振り向くと、
「どうして笑わないの」
画集を持ったまま、彼は寂しげに私を見下ろしていた。
「え……?」
「いつも本が見つかると、自分のことみたいに喜んでくれるのに」
大きな手が、私の頬にそっと触れる。
「僕はいつも……それが嬉しくて、ここに来てるんだけど」
――私が好きなのは、見つかったときの、嬉しそうな顔――
「ここに、あり、ました」
笑おうとしたのに、零れたのは涙だった。
微笑む彼に引き寄せられ、拒めぬまま交わしたキスは、
書棚の奥に、そっと隠そう。
END