TABOO 短編集
その枷に意味はない
高瀬史也は2つ年下だ。
支社内では1番若く、顧客受けする快活な笑みと丁寧な仕事で営業成績も悪くない。
「真央さん空いてますよ」
私のグラスにビールを注ぐ彼は普段からそういう気質なのだろう。相手が誰であろうとさりげない気遣いをみせる。
「俺の顔になんか付いてます?」
小さく笑われて彼を凝視している自分に気付いた。
「ううん別に」
形ばかりグラスに口をつける。
あぶない。隣席になったのをいいことにじろじろ見すぎた。