TABOO 短編集
「……ちょっと、出てくる」
「は? 今から?」
「うん、友達が近くに来てて。すぐ戻るから」
「おい、テレビは――」
家を飛び出して辺りを見回す。
外灯の陰、黒いワゴンが闇に紛れるように停まっていて、おそるおそる近づくと突然扉が開き、中に引っ張り込まれた。
「メイ、会いたかった」
大きな腕に抱きすくめられる。
「瞬ちゃん……」
澄んだ瞳は昔と変わらず、顔つきは少し精悍さが増した。それでも全体を覆う輝きは強くなる一方だ。
運転席が空っぽで「繁さんは?」と問うと、瞬ちゃんは煙草を吸う仕草をしてみせた
「メイ、朝までそばにいて」
耳元で囁かれると背中がしびれる。
いいよ、と返す声がかすれた。
「俺と、結婚して」
「……いいよ」
答えながら胸が詰まった。