TABOO 短編集
スローラブ
「ランナーズハイってそんなキモチイイ?」
翔がアキレス腱を伸ばしつつ私を見る。
「一説によるとイクほどイイとか言うじゃん? だったら俺も経験してみたいなーと」
「バカ」
シューズの紐を締めながら笑ってしまった。
私たちが所属するランニングサークルは、タイム重視のマラソン派と健康志向のスロージョギング派にわかれていて、私は前者、翔は後者だ。
「ただ苦痛が消えるだけよ」
「え、脳内麻薬で気持ちよくなんじゃねぇの。モル……」
「モルヒネ、じゃなくてエンドルフィンね。ただの鎮痛作用」