赤ずきんと双子のおおかみ
「その格好は、『赤ずきん』のつもりですか?」

青年は、少女の、ワインやチーズの入ったかごを覗き込んで言った。



少女は、こくり、とうなずいた。

「お嬢さん。『赤ずきん』は、この地方に伝わる、ただのお伽話です。こんな所で待っていても、お伽話に出てくるような、おおかみは出てきませんよ。」

少女はうらめしそうな顔をして、唇を噛んだ。

「こんなに寒い夜にこんな所に居ては、風邪を引いてしまいます。それに、きっとお母さんが心配していますよ。」

お母さん、という言葉を青年が発した瞬間、少女の顔が曇った。

「。。。。。お母さんなんて、いないし、帰る家なんかない!!」

青年は、もう一度、少女を見つめた。

青年の目は灰色をしていたが、その目に、獣が持つ凶暴な光は無く、とても暖かい光を放っていた。

「どうやら、訳ありのお嬢さんのようですね。よかったらお話を聞きますよ。ここは寒いですから、よかったら私と一緒においでなさい。」

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