赤ずきんと双子のおおかみ
青年は苦笑いして言った。

「こらこら、変態とか、言わないでくださいよ。人聞きが悪いなぁ。」

「こら離せ!!離せってば!!」

大暴れする少女に、少しもひるむことなく、青年は、少女を抱える手にさらに力を入れる。


華奢な青年であるが、彼のどこにそんな力があるのだろうか。この力の強さは、男のもの、いや、紛れもない獣の力である。

少女は、暴れるのをやめて、青年に運ばれるままになった。

小道を抜けて、雑木林の中に、どんどん入っていく。

夜の森は不気味で、今にも、恐ろしい獣が、影から現れそうである。

少女は、いつのまか自分が、青年の服を強く握っていることに気付き、慌てて手を離した。

「怖がらなくて、いいですよ。ここらへんは、私の庭みたいなものですから。何も心配いりません。」

少女は、自分の気持ちを見透かされたようで、不機嫌になった。それでも、青年の言葉に安堵を覚えている自分に気付く。

「怖くなんか。。。怖くなんかないよ!!だから、子供扱いするなって言ってるだろ!!」

また、青年がくすりと笑う。

「いったい私をどこに連れていくつもりなんだ?!」

「心配なさらなくて、結構です。私の兄は、少し偏屈ですが、悪いおおかみではありませんので。。。」





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