助けて
「えぇ。
早紀、もう1回、言って」
とママは、耳を傾げて耳を早紀の口元に近づけて聞こうとしてる。
早紀、声が出ないよ。
嫌だよ。
「ママ、仕事、休んだの?」
と出にくい声で聞いた。
「後、30分後に行くけど」
とママ、言って早紀の口元の辺りの耳を離した。
ママの姿で見えなかった疾風は、にゃぁと笑ったように見えて一瞬、ゾクッとして、怖い。
何か、起こりそうな予感がして、胸を捕まれたように苦しくなった。
怖い。
ママに、見せる顔と早紀に見せる顔が違う。
それが、恐怖の種であるのに。