彼は優しかったのか、
切なさ01
田中杏子(あんず)は溜め息を吐いた。
最近、精神的に疲れているからだ。
「平安時代では...」
古典は好きだ。でも、頭には入ってこない。頭では別のことを考えている。
事実上、彼氏の宮崎昌史(まさし)のことだ。
「(付き合ってる、んだよね)」
うん、付き合ってる。この前だって、3ヶ月記念日のデートしたばっかだ。
「(じゃあ、昨日のは?)」
ガンガンと徐々に痛くなってくる頭痛に、少しだけ髪の毛を握った。ザリ、と特有の音がする。
────遡ること、昨日。