恋愛コンプレックス
美麗の家から自分の家に帰ってきてからわずか十分後。
机の上においてあったケータイがブルブルと震え出した。
ディスプレイに映し出されている文字は、〈直樹〉だった。
あいつからメールなんて珍しいな・・・。
まぁ、留学のことについてだろうけど。
【明日放課後空けておいて】
メールの内容はこれだった。
内容からして、なんとしても話すらしい。
・・・でも俺は、直樹になんと言われようと、留学をやめる気はない。
めったにないチャンスだし。
断る理由がない。
直樹と離れてしまうのはかなり寂しい。
が、それ以外に日本にとどまっている理由がないのだ。
なんの、未練があるわけではないし。
『長谷川』
『長谷川、好きだ』
そうだ。なんの未練もない────。