恋愛コンプレックス


美麗の家から自分の家に帰ってきてからわずか十分後。


机の上においてあったケータイがブルブルと震え出した。


ディスプレイに映し出されている文字は、〈直樹〉だった。



あいつからメールなんて珍しいな・・・。


まぁ、留学のことについてだろうけど。






【明日放課後空けておいて】



メールの内容はこれだった。



内容からして、なんとしても話すらしい。







・・・でも俺は、直樹になんと言われようと、留学をやめる気はない。






めったにないチャンスだし。




断る理由がない。





直樹と離れてしまうのはかなり寂しい。




が、それ以外に日本にとどまっている理由がないのだ。








なんの、未練があるわけではないし。






『長谷川』





『長谷川、好きだ』






そうだ。なんの未練もない────。













< 331 / 374 >

この作品をシェア

pagetop