あたしだけの温もり
「せんせ~、今日転校生が来るという噂を耳にしたのですが、それは本当ですか?」

 クラスの男子がりっちゃんに聞く。

 りっちゃん=律子先生、だ。

 朝から皆が騒いでいたのは、多分このことだ。

「もう聞いたのか、噂は回るのが早いな~」

 腕を組みふむふむと意味の分からない納得をして、りっちゃんは口を開いた。

 「そうだ!今日このクラスには転校生が来る」

 クラスメートが一斉に騒ぎ始めた。

「りっちゃん!女?それとも男~?」

「名前は?名前はなんていうの?」

「どっから来た奴~?」

 一斉に質問攻めをするクラスメートに、りっちゃんはキレ気味だ。

 そんなりっちゃんの顔色を伺いながら、少しずつ喋らなくなった。

 誰も喋らなくなると、りっちゃんは再び口を開いた。

「私に聞くより本人に聞け!ていうことで、入れ樫木」

 樫木という名の姿が、廊下の影で見えた。

 ___ガラッ、と扉を開け、教室に入ってきたのは男だった。

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