あたしだけの温もり
 「なんだ男かよ~」と、残念そうな顔をする男子もいれば、「カッコよくない!?」と再び興奮し騒ぎ出す女子。

「だっからお前らさっきからうっせーんだよっ!」

 りっちゃんも再びキレた。

「おい樫木、適当に自己紹介しとけ」

 キレたりっちゃんは怖い。

 これ以上リッちゃんをキレさせると、もう誰も手に負えない。

 りっちゃんはキレると、職員室に帰ってクラスの誰かが説得して謝らない限り、教室には戻ってきてくれくれない。

「おい、お前りっちゃんに謝れよ」

「え、怖いよ・・・お前が言えよ」

 小声で誰かが話しているのを耳にしながら、あたしは前に立っている男を見た。

「樫木 優也(カシノキ ユウヤ)と言います。家庭の事情で引っ越してきました。これからよろしく」

 少し微笑んでから、「俺の席は?」とりっちゃんに聞く樫木。

「樫木の席は神凪の前の席だ」

 神凪・・・神凪っ!あたし!?

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