アウトサイダー
それから、池森さんに会う度に、私は明るく振る舞った。
私が母にしてあげられることは、これくらいしかなかったから。
そうしてしばらくして、私たちは家族として生活し始めた。
シェルターを出て、普通のマンションへ――。
一流企業につとめていた父とは違い、池森さんのお給料がすごい訳ではなかった。
それでも、人並みの生活というものを手に入れることができた私たちには、幸せな時間を取り戻した瞬間だったのだ。
なにより、アウトサイダーだと後ろ指さされることがなくなるのだと思うと、張りつめていた気持ちが緩んでいくのがわかる。
たとえそれが、見かけだけだったとしても。
やっと地獄から抜け出したのだと思った。