アウトサイダー
さり気なく風上に立って私を包み込むのは、きっと私に風を当てないため。
「ちょっと寒いか?」
「ううん、大丈夫。千島さんは?」
「俺は、紗知がいればそれでいいの。
ねぇ、そろそろ名前で呼んでくれないかな」
「えっ?」
「千島さんって、他人行儀だろ?」
そうして私たちは、また一歩近づいた。
彼が予約してくれた旅館は、本当に料理が豪華だった。
「コウさんとお母さんにも食べさせてあげたいな」
「そうだな。今度一緒に来ようか」
「うん!」
こうやって、ふたりの事も気遣ってくれる彼が好きだ。