アウトサイダー
いくつか残っている体の傷も随分薄れてもう忘れてしまいそうだけど、きっと母も私も、あの地獄は忘れられない。
だけど、それと同時にそれまで確かにあった、温かい家庭も。
彬さんの提案で、私と母の過去は彬さんのご両親には伏せられた。
「僕が知っていれば、それで十分です。
紗知の傷は、一生かかっても俺が治します」
そんな風にコウさんと母に宣言した彼に、涙が溢れた。
こうして私は、ずっと念願だったはずのすごく真っ当な幸せを手に入れた。
ただ、ひとつの事に、目を伏せて――。