アウトサイダー

私を抱き寄せてひとしきり泣いた後、母は今までとは違う強い口調で私を促した。


「紗知、荷物を纏めなさい。
身の回りの物だけでいいわ。
着替えと、教科書と……それから……」

「お母さん?」

「もう、無理だわ。あなたにまで手をあげるなんて。

お母さんね、役所でお願いしてきたの。
どこかふたりで暮らせる場所をって。
そうしたら、すぐに対応してくれてね。

暫くは隠れていなきゃいけなくなるかもしれないけど、お父さんの手の届かないところでふたりで暮らそう? 
どこか遠いところに行こう。

紗知にはずっと辛い想いをさせたね。
お母さん、弱くてごめんね」


そう言ったときの母の目からは、強い力を感じた。


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